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Red Hat Enterprise Linux 6

リリースノート

Red Hat Enterprise Linux 6 リリースノート

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概要
このリリースノートは Red Hat Enterprise Linux 6 リリースで実装されている主要な特徴と拡張について文書化しています。

1. はじめに
2. インストーラ
2.1. インストール方法
2.2. インストール時にバックアップ用のパスフレーズを作成
2.3. DVD メディアブートカタログエントリ
2.4. インストールクラッシュレポート
2.5. インストールログ
3. ファイルシステム
3.1. ext4 (Fourth Extended Filesystem) のサポート
3.2. XFS
3.3. Block Discard — 貧弱な供給を持つ LUN と SSD デバイス用の強化型サポートです
3.4. NFS (Network File System)
4. ストレージ
4.1. ストレージ I/O アライメントおよびサイズ
4.2. DM-Multipath によるダイナミック負荷分散
4.3. Logical Volume Manager (LVM)
5. 電力管理
5.1. powertop
5.2. tuned
6. パッケージ管理
6.1. 強力なパッケージチェックサム
6.2. PackageKit パッケージマネージャ
6.3. Yum
7. クラスタリング
7.1. Corosync Cluster Engine
7.2. 統一したロギング設定
7.3. 高可用性管理
7.4. High Availability の一般的な改善
8. セキュリティ
8.1. System Security Services Daemon (SSSD)
8.2. SELinux (Security-Enhanced Linux)
8.3. 暗号化したストレージデバイス用のバックアップパスフレーズ
8.4. sVirt
8.5. Enterprise Security Client
9. ネットワーキング
9.1. 複数キューのネットワーキング
9.2. IPv6 (Internet Protocol version 6)
9.3. Netlabel
9.4. Generic Receive Offload
9.5. ワイヤレスのサポート
10. デスクトップ
10.1. グラフィカルスタートアップ
10.2. サスペンドとレジューム
10.3. 複数ディスプレイサポート
10.4. NVIDIA 製グラフィックスデバイス用の nouveau ドライバ
10.5. 国際化
10.6. アプリケーション
10.7. NetworkManager
10.8. KDE 4.3
11. ドキュメンテーション
11.1. リリースドキュメンテーション
11.2. インストールおよびデプロイメント
11.3. セキュリティ
11.4. ツールおよびパフォーマンス
11.5. 高可用性
11.6. 仮想化
12. カーネル
12.1. リソース制御
12.2. スケーラビリティ
12.3. エラーレポート
12.4. 電力管理
12.5. カーネルパフォーマンスの分析
12.6. 一般的なカーネル更新
13. コンパイラとツール
13.1. SystemTap
13.2. OProfile
13.3. GNU Compiler Collection (GCC)
13.4. GNU C Library (glibc)
13.5. GNU Project デバッガ (GDB)
14. 相互運用性
14.1. Samba
15. 仮想化
15.1. カーネルベースの仮想マシン
15.2. Xen
15.3. virt-v2v
16. サポート容易性及びメンテナンス
16.1. firstaidkit(救急)システムと復元ツール
16.2. バグの報告
16.3. 自動化したバグ報告ツール
17. Web サーバーとサービス
17.1. Apache HTTP Web サーバー
17.2. PHP: Hypertext Preprocessor (PHP)
17.3. memcached
18. データベース
18.1. PostgreSQL
18.2. MySQL
19. アーキテクチャ関連の事項
A. 改訂履歴

1. はじめに

Red Hat は今回、Red Hat Enterprise Linux 6 の完成を発表します。Red Hat Enterprise Linux 6 は次世代 Red Hat オペレーティングシステム の総合的なスイートです。ミッションクリティカルなエンタープライズコンピューティング用に設計され、トップのエンタープライズソフトウェア及び ハードウェアのベンダーに認定を受けています。
このリリースは以下のアーキテクチャ群のシングルキットとして利用できます:
  • i386
  • AMD64/Intel64
  • System z
  • IBM Power (64-bit)
このリリースでは、Red Hat はサーバー、システム、及び総合的な Red Hat のオープンソースの経験に渡る改善の結晶をお届けします。

注記

このバージョンのリリースノートは旧態化した内容を含んでいるかも知れません。このリリースに収納されている新規機能の最新の 概要については Online Release Notes を 参照して下さい。

2. インストーラ

Red Hat Enterprise Linux インストーラ (anaconda とも呼ばれます) を使用すると、Red Hat Enterprise Linux 6 を簡単にインストールできます。 リリースノートのこのセクションでは、Red Hat Enterprise Linux 6 のインストーラに実装された新しい機能について概説します。

その他の資料

Red Hat Enterprise Linux 6 Installation Guide は、インストーラとインストールプロセスに関する詳細な情報を提供します。

2.1. インストール方法

Red Hat Enterprise Linux をインストールためにインストーラは キックスタートグラフィカルインストーラ、およびテキストベースインストーラの 3 つの主なインタフェースを提供します。

2.1.1. グラフィカルインストーラ

Red Hat Enterprise Linux のグラフィカルインストーラを使用すると、ユーザーはインストールするシステムの準備に関する主な手順に従って作業を行えます。Red Hat Enterprise Linux 6 のインストール GUI では、ディスクパーティションとストレージ設定に関するユーザビリティが大幅に向上しました。
インストールプロセスの初期段階で、ユーザが基本的なストレージデバイスまたは特殊ストレージデバイスを選択できるようになりました。通常、基本的なストレージデバイスは、デバイスを使用する前に追加の設定を必要としません。Firmware RAID デバイス、Fibre Channel over Ethernet (FCoE) デバイス、マルチパスデバイス、および他の Storage Area Network (SAN) デバイスは新しいインタフェースを使用して簡単に設定できるようになりました。
Specialized Storage Devices Configuration
図1 特殊ストレージデバイス設定

パーティションレイアウトを選択するインタフェースが拡張され、デフォルトの各パーティションレイアウトに対して詳細な説明と図が提供されるようになりました。
The graphical installer
図2 パーティションレイアウトの候補

インストーラでは、インストール前にストレージデバイスをインストール対象デバイスまたはデータストレージデバイスのいずれかとして指定できます。
The graphical installer
図3 ストレージデバイスの指定

2.1.2. キックスタート

キックスタートは、システム管理者が Red Hat Enterprise Linux をインストールするために使用する自動化されたインストール方法です。キックスタートを使用する場合、一般的なインストール中に通常尋ねられるすべての質問に対する回答を含む単一のファイルが作成されます。
Red Hat Enterprise Linux 6 では、キックスタートファイルの検証が改善され、インストールを始める前にインストーラでキックスタートファイルの構文に関する問題を把握できるようになりました。

2.1.3. テキストベースインストーラ

テキストベースインストーラは、主にリソースが制限されたシステム向けに提供されています。テキストベースインストーラは単純化され、デフォルトのディスクレイアウトへのインストールや新しく更新されたパッケージのインストールができるようになりました。
text-based installer
図4 テキストベースインストーラ

注記

一部のインストールでは、テキストベースインストーラに存在しない高度なインストールオプションが必要です。ターゲットシステムがグラフィカルインストーラをローカルで実行できない場合は、Virtual Network Computing (VNC) ディスプレイプロトコルを使用してインストールを完了します。

2.2. インストール時にバックアップ用のパスフレーズを作成

Red Hat Enterprise Linux 6 のインストーラでは、暗号化キーを保存し、暗号化されたファイルシステムのバックアップパスフレーズを作成できます。この機能の詳細については、「暗号化したストレージデバイス用のバックアップパスフレーズ」 を参照してください。

注記

現時点では、暗号化されたデバイスのバックアップパスフレーズをインストール中に作成することは、キックスタートインストール中にのみ可能です。この新しい機能の詳細と Red Hat Enterprise Linux 6 のキックスタートインストールでこの機能を使用する方法については、『インストールガイド (Installation Guide)』の付録「ディスク暗号化 (Disk Encryption)」を参照してください。

2.3. DVD メディアブートカタログエントリ

Red Hat Enterprise Linux 6 の DVD メディアには、BIOS および UEFI ベースのコンピュータのブートカタログエントリが含まれます。したがって、このメディアを使用していずれかのファームウェアインタフェースに基づいてシステムをブートできます (UEFI は Unified Extensible Firmware Interface の頭字語であり、Intel により最初に開発され、現在は Unified EFI Forum により管理されている標準的なソフトウェアインタフェースです。これは古い BIOS ファームウェアを置き換えることを目的としています)。

重要項目

非常に古い BIOS が実装された一部のシステムは、複数のブートカタログエントリを含むメディアからブートしません。このようなシステムは Red Hat Enterprise Linux 6 DVD からはブートしませんが、USB ドライブを使用してブートしたり、PXE を使用してネットワークからブートしたりできます。

注記

UEFI と BIOS のブート設定は大幅に異なり、互換性がありません。設定の対象となるファームウェアが変更された場合、Red Hat Enterprise Linux 6 のインストールされたインスタンスはブートしません。たとえば、BIOS ベースのシステムにオペレーティングシステムをインストールし、インストールされたインスタンスを UEFI ベースのシステムでブートすることはできません。

2.4. インストールクラッシュレポート

Red Hat Enterprise Linux 6 では、インストーラのインストールクラッシュレポートが拡張されました。インストーラがインストール中にエラーを検出すると、エラーの詳細がユーザーに報告されます。
text-based installer
図5 インストールエラーレポート

エラーの詳細は、Red Hat Bugzilla バグ追跡 Web サイトにすぐに報告したり、ローカルでディスクに保存したり (インターネットに接続できない場合) できます。
text-based installer
図6 Bugzilla への送信

2.5. インストールログ

インストールのトラブルシューティングとデバッグを支援するために、インストーラによって生成されたログファイルにさらに詳細な情報が含まれるようになりました。インストールログの詳細とログを使用してトラブルシューティングを行う方法については、『インストールガイド (Installation Guide)』の次のセクションを参照してください。

3. ファイルシステム

詳細文献

ストレージ管理ガイド Storage Administration Guide は Red Hat Enterprise Linux 6 でファイルシステムの効果的な管理方法について詳しい説明を提供します。更には Global File System 2 の 文書は Red Hat Enterprise Linux 6 での Red Hat Global File System 2 の設定とメンテナンスについての特定情報の詳細を提供します。

3.1. ext4 (Fourth Extended Filesystem) のサポート

ext4 (Fourth Extended Filesystem) は ext3 (Third Extended Filesystem) を土台にしており、数多くの改善を特徴としています。これらの 特徴には、より大きなファイルシステムとファイルへのサポート、より迅速でより効率的なディスクスペースの割り当て、ディレクトリ内に無限数の サブディレクトリの維持、より迅速なファイルシステムチェック、及びより堅牢なジャーナリングが含まれます。ext4 ファイルシステムはデフォルトで選択されており、強く推奨されるものです。

3.2. XFS

XFS とは、最初に Silicon Graphics, Inc 社で設計された高拡張性でハイパフォーマンスのファイルシステムです。最大 16 exabyte(約1600万 terabyte)のファイルシステム、最大 8 exabyte(約800万 terabyte)のファイル、及び数千万のエントリを含んでいるディレクトリ構成を サポートするために創造されています。
XFS は、より迅速なクラッシュ復元を担当するメタデータジャーナリングをサポートします。XFS ファイルシステムはまた、マウント時でアクティブな 間にデフラグと展開もできます。

3.3. Block Discard — 貧弱な供給を持つ LUN と SSD デバイス用の強化型サポートです

Red Hat Enterprise Linux 6 のファイルシステムは新しい Block Discard 機能を使用して、あるデバイスの一部 (ブロックとも呼ばれます) が使用されていないことを検出した時にストレージデバイスが通知を受けるようにします。Block Discard 機能が実装されたストレージデバイスは少ないですが、最近の SSD (Solid State Drive) はこの機能を使用して内部データのレイアウトを最適化し、消耗を積極的に均等化します。また、一部のハイエンドの SCSI デバイスは Block Discard の情報を使用して、シンプロビジョニングされた LUN を実装します。

3.4. NFS (Network File System)

NFS (Network File System) は、リモートホストがファイルシステムをネットワーク上でマウントして、まるでローカルでマウントされているように それらのファイルシステムと交信できるようにします。これによりシステム管理者はネットワーク上の中央化したサーバーにリソースを集中できます。 Red Hat Enterprise Linux 6 は NFSv2、NFSv3、NFSv4 のクライアントをサポートします。NFS を介したマウントは今回 NFSv4 でデフォルトに なっています。
Red Hat Enterprise Linux 6 では NFS に対して追加の改良がなされており、IPv6 (Internet Protocol version 6) での拡張サポートを提供します。

4. ストレージ

4.1. ストレージ I/O アライメントおよびサイズ

SCSI 標準と ATA 標準の最新の拡張により、ストレージデバイスが優先する (場合によっては、必要な) I/O アライメントおよび I/O サイズを指定できるようになりました。この情報は、物理セクタサイズが 512 バイトから 4K バイトに増加された新しいディスクドライブで特に役に立ちます。また、この情報はチャンクサイズとストライプサイズがパフォーマンスに影響を与える可能性がある RAID デバイスでも役に立ちます。
Red Hat Enterprise Linux 6 では、この情報を利用し、ストレージデバイスに対してデータを読み書きする方法を最適化できます。

その他の資料

ストレージ管理ガイドには、I/O 制限を詳しく説明する章が含まれます。

4.2. DM-Multipath によるダイナミック負荷分散

Device Mapper Multipathing (DM-Multipath) は、サーバーをストレージアレイに接続する複数のケーブル、スイッチ、およびコントローラから単一の概念的なデバイスを作成します。これにより、接続デバイス (パスとも呼ばれます) の一元的な管理が可能になり、利用可能なすべてのパスで負荷を分散できるようになります。
Red Hat Enterprise Linux 6 の DM-Multipath には、パスで動的に負荷を分散する 2 つの新しいオプションが導入されました。各パスのキューサイズまたは以前の I/O タイムデータに基づいてパスを動的に選択できるようになりました。

その他の資料

DM Multipath ドキュメントは、Red Hat Enterprise Linux 6 の Device-Mapper Multipath 機能の使用に関する情報を提供します。

4.3. Logical Volume Manager (LVM)

ボリューム管理では、論理ストレージボリュームを作成することにより物理ストレージ上に抽象レイヤが作成されます。これにより、物理ストレージを直接使用するよりも高い柔軟性が提供されます。Red Hat Enterprise Linux 6 は Logical Volume Manager (LVM) を使用して論理ボリュームを管理します。

重要項目

system-config-lvm は論理ボリュームを管理するために Red Hat Enterprise Linux で提供されるグラフィカルユーザーインタフェースです。system-config-lvm により提供されたこの機能は、gnome-disk-utility (palimpsest とも呼ばれます) という名前の管理しやすいツールに移行中です。結果として、Red Hat は system-config-lvm の更新を慎重に行っています。gnome-disk-utility の機能が system-config-lvm と同等になった場合、Red Hat は Red Hat Enterprise Linux 6 のライフサイクル中に system-config-lvm を廃止することがあります。

その他の資料

論理ボリュームマネージャ管理ドキュメントは、LVM 論理ボリュームマネージャについて説明し、クラスタ環境での LVM の実行に関する情報を提供します。

4.3.1. LVM ミラーの改善

LVM は、ミラーリングされたボリュームをサポートします。ミラーリングされた論理ボリュームを作成することにより、LVM では、基礎となる物理ボリュームに書き込まれたデータが個別の物理ボリュームにミラーリングされることが保証されます。
4.3.1.1. ミラーのスナップショット
LVM スナップショット機能では、サービスを中断させずに任意の時点で論理ボリュームのバックアップイメージを作成できます。スナップショットの取得後に元のデバイスに変更が加えられた場合は、スナップショット機能により、変更されたデータ領域の変更前の状態のコピーが作成されるため、デバイスの変更前の状態を再構築できます。Red Hat Enterprise Linux 6 では、ミラーリングされた論理ボリュームのスナップショットを取得できます。
4.3.1.2. スナップショットのマージ
Red Hat Enterprise Linux 6 では、論理ボリュームのスナップショットを元の論理ボリュームにマージできます。これにより、システム管理者はスナップショットにより保持されたポイントにマージすることにより、論理ボリュームで行われた変更を元に戻すことができます。
新しいスナップショットマージ機能の詳細については、lvconvert man ページを参照してください。
4.3.1.3. 4 つのボリュームミラー
Red Hat Enterprise Linux 6 の LVM は、最大 4 つのミラーを持つ論理ボリュームの作成をサポートします。
4.3.1.4. ミラーログのミラーリング
LVM はミラーと同期するリージョンを追跡するために使用する小さいログを (個別のデバイス上に) 保持します。Red Hat Enterprise Linux 6 では、このログデバイスをミラーリングできます。

4.3.2. LVM アプリケーションライブラリ

Red Hat Enterprise Linux 6 には新しい LVM アプリケーションライブラリ (lvm2app) が導入され、LVM ベースのストレージ管理アプリケーションを開発できるようになりました。

5. 電力管理

詳細文献

Red Hat Enterprise Linux 6 の効果的な電力消費管理の情報を提供する 電力管理ガイド Power Management Guide を参照して下さい。

5.1. powertop

Red Hat Enterprise Linux 6 でのティックレスカーネルの導入 (「ティックレスカーネル」 参照) により、CPU がより頻繁にアイドル 状態に入れるようになり、電力消費を低減して電力管理を向上しています。新しい powertop ツールは頻繁に CPU の 目を覚ますようなカーネルとユーザースペースアプリケーションの特定コンポーネントを識別できる能力を提供します。 powertop はこのリリース内の多くのアプリケーションを識別してチューンするために開発段階で使用されており、 不要な CPU の目覚めを 10% ほど低減しています。

5.2. tuned

tuned は、システムコンポーネントを監視して動的にシステムセッティングをチューンするシステムチューニングの デーモンです。ktune (システムチューニング用の静的メカニズム) を活用することによって、 tuned は、デバイスを監視してチューンすることができます (例。ハードディスクドライブとイーサネットデバイス)。 Red Hat Enterprise Linux 6 はまた、ディスク操作監視用に diskdevstat と、そしてネットワーク操作監視用に netdevstat も導入します。

6. パッケージ管理

6.1. 強力なパッケージチェックサム

RPM はパッケージの整合性とセキュリティの向上を確実にするために SHA-256 などの強力なハッシュアルゴリズムを使用した署名つきの パッケージへのサポートを提供します。Red Hat Enterprise Linux 6 のパッケージは透過的に XZ ロスレス圧縮ライブラリで圧縮されており、 これはより強い圧縮 (及びパッケージサイズの縮小) とより迅速な解凍 (RPM のインストール時) のために LZMA2 圧縮アルゴリズムを実装します。 より強力なパッケージチェックサムに関する詳細情報は 導入ガイドDeployment Guide でご覧になれます。

6.2. PackageKit パッケージマネージャ

Red Hat はユーザーのシステムに互換性があり Yum レポジトリ内で有効になっているパッケージ及びパッケージグループの表示、管理、更新、インストール、そしてアンインストールをするための PackageKit を提供します。PackageKit は数種のグラフィカルインターフェイスで構成されており、これは GNOME パネルメニューからか、あるいは PackageKit が利用可能な更新を通知する時には通知エリアから開くことができます。更には、 PackageKit の使用により、迅速なレポジトリの有効化と無効化、グラフィカルで検索可能なトランザクションログ、及び PolicyKit の統合が可能に なります。PackageKit に関する詳細情報は 導入ガイドDeployment Guide でご覧になれます。

6.3. Yum

そのプラグインアーキテクチャを介して Yum は delta RPM (presto plugin を使用)、RHN 通信 (rhnplugin)、そして監査と適用などの各種能力のための新しい、又は拡張したサポートを提供します。システムへ関連したセキュリティ修正 (セキュリティプラグイン) のみを計算された最小限侵害数で更新を適用します。
Yum はまた、yum-config-manager ユーティリティと共に配布されます。これは各個別レポジトリ用の全てのセットの設定オプションとパラメータに関する総括的な情報を表示します。Yum の更新に関する詳細情報は 導入ガイド Deployment Guide でご覧になれます。

7. クラスタリング

クラスタは、重要な本番稼働サービスの安定性、スケーラビリティ、および可用性を向上させるために連携して動作する複数のコンピュータです。Red Hat Enterprise Linux 6 の使用は、パフォーマンス、高可用性、負荷分散、およびファイル共有の多様なニーズを満たすようさまざまな設定で実現できます。

詳細文献

クラスタスイートの概要 Cluster Suite Overview は、Red Hat Enterprise Linux 6 の Red Hat Cluster Suite の概要を提供します。高可用性の管理 High Availability Administration は Red Hat Enterprise Linux 6 の Red Hat クラスタシステムの設定と管理を説明しています。

7.1. Corosync Cluster Engine

Red Hat Enterprise Linux 6 は中核となるクラスタ機能のために Corosync Cluster Engine を活用します。

7.2. 統一したロギング設定

High Availability でデプロイされるさまざまなデーモンが、共有された統一ロギング設定を使用するようになりました。これにより、システム管理者はクラスタ設定内で単独のコマンドを使用してクラスタのシステムログを有効にし、取得し、読み込めるようになります。

7.3. 高可用性管理

Conga は Red Hat Enterprise Linux High Availability に一元化された設定と管理を提供するソフトウェアコンポーネントの統合セットです。Conga の主要コンポーネントの1つとして luci があります。luci はコンピュータの1つで稼働して複数のクラスタおよびコンピュータと通信するサーバーです。Red Hat Enterprise Linux 6 では、luci と通信するために使用される Web インタフェースが再設計されました。

7.4. High Availability の一般的な改善

上記の詳細にある機能や改善の他にも、クラスタリングに対する以下の機能と拡張が Red Hat Enterprise Linux 6 で実装されています。
  • IPv6 (Internet Protocol version 6) へのサポート拡張
  • SCSI 永続性保存フェンシングサポートの向上
  • 仮想化 KVM ゲストは今回管理されたサービスとして実行可能

8. セキュリティ

詳細文献

セキュリティガイド Security Guide は、ローカル及びリモートの侵入、悪用、及び不正な行為に対処するワークステーションとサーバーのセキュリティプロセスとその実践の学習でユーザーと管理者を支援します。

8.1. System Security Services Daemon (SSSD)

System Security Services Daemon (SSSD) は、Red Hat Enterprise Linux 6 の新しい特徴の1つであり、識別と認証の中央管理の為のサービス セットを実装します。中央化した識別と認証サービスは識別のローカルキャッシングを有効にして、サーバーへの接続が切断されたようなケースでも ユーザーが識別できるようにします。SSSD は、Red Hat Directory Server、Active Directory、OpenLDAP、389、Kerberos、及び LDAP を 含む多様な識別と認証のサービスをサポートします。

詳細文献

導入ガイド Deployment Guide には、System Security Services Daemon (SSSD) のインストール及び設定方法とそれが提供する機能の 使用方法を説明するセクションが含まれています。

8.2. SELinux (Security-Enhanced Linux)

SELinux (Security-Enhanced Linux) は Linux カーネルに MAC (Mandatory Access Control) を追加するもので、Red Hat Enterprise Linux 6 ではデフォルトで有効になっています。一般目的の MAC アーキテクチャは、システム内の全てのプロセスとファイルに対して多種多様のセキュリティ関連情報を含むラベルを決定土台にする、管理的にセットしたセキュリティポリシーを強制する能力を必要とします。

8.2.1. 拘束されたユーザー

伝統的に SELinux はアプリケーションがシステムと交流する方法を定義して制御するために使用されていました。Red Hat Enterprise Linux 6 内の SELinux は、システム管理者がシステムに対する特定ユーザーのアクセスを制御できるようにするポリシーのセットを導入しています。

8.2.2. Sandbox

Red Hat Enterprise Linux 6 内の SELinux は新しいセキュリティ sandbox 機能を特徴としています。セキュリティ sandbox は SELinux ポリシーのセットを追加して、システム管理者が厳重に抑制されている SELinux ドメイン内でいかなるアプリケーションでも実行できるようにします。 sandbox を使用すると、システム管理者はシステムを破損することなく、信頼できないコンテンツのプロセスをテストすることができます。

8.2.3. X Access Control Extension (XACE)

X ウィンドウシステム(俗称、X)は Red Hat Enterprise Linux 6 でグラフィカルユーザーインターフェイス (GUI) を表示するための基本フレームワークを提供します。今回のリリースでは、新しい X Access Control Extension (XACE) が特徴となっており、これは X 内での決定に、 特にウィンドウオブジェクト間の情報フローの制御に SELinux がアクセスできるようにするものです。

8.3. 暗号化したストレージデバイス用のバックアップパスフレーズ

Red Hat Enterprise Linux はストレージデバイス上のデータを暗号化する能力を提供して、データへの不正なアクセスに対する防御の支援をします。 暗号化は、特定の暗号化キーの使用でのみ読み込みができる形式にデータを転換することで達成できます。インストールプロセス中に作成されるこのキーが、暗号化したデータの復号への唯一の手段です。
text-based installer
図7 データの復号

しかし、パスフレーズを紛失した場合、暗号化キーは使用できません。そして暗号化ストレージデバイス上のデータにはアクセス不可能となります。
Red Hat Enterprise Linux 6 は暗号化キーを保存してバックアップパスフレーズを作成する能力を提供します。この機能により、当初のパスフレーズを紛失した時でも暗号化したボリューム(root デバイスも含む)の復元を可能にします。

8.4. sVirt

libvirt は Red Hat Enterprise Linux 6 の仮想化能力の管理と交信の為の C 言語アプリケーションプログラミングインターフェイス (API) です。 このリリースでは、libvirt は新しい sVirt コンポーネントを特徴としています。sVirt は SELinux と統合して、仮想化環境内のゲストとホストへの 不正なアクセスを防止する為のセキュリティメカニズムを提供します。

8.5. Enterprise Security Client

Enterprise Security Client (ESC) は、Red Hat Enterprise Linux がスマートカードとトークンを管理できるようにする簡単な GUI です。 新しいスマートカードではフォーマットとエンロールができますが、このことはスマートカードの為に自動的に新しいキーが生成されて、 証明書が要求されることを意味します。スマートカードのライフサイクルも管理されて、紛失したスマートカードはその証明書が無効になり、 また期限切れの証明書は更新も可能となります。ESC は、Red Hat Certificate System かあるいは Dogtag PKI のいずれかのより大規模な 公共キーインフラストラクチャ管理製品との共用で機能するものです。

9. ネットワーキング

9.1. 複数キューのネットワーキング

ネットワークデバイス上で転送される全てのデータパケットは CPU が完了すべきプロセッシングを表します。Red Hat Enterprise Linux 6 の低レベルネットワーク実装により、ネットワークデバイスドライバーはネットワークパケットプロセッシングを複数のキューに分割できるようになります。 これらのプロセスを分割することにより、システムは最近のシステム上に存在する複数プロセッサと CPU コアをもっと良く活用できるようになります。

9.2. IPv6 (Internet Protocol version 6)

次世代の IPv6 (Internet Protocol version 6) 仕様は IPv4 (Internet Protocol version 4) の後継として設計されています。IPv6 は 拡張したアドレッシング機能、フローラベル付け、及び簡素化したヘッダ形式など、IPv4 に対して広範囲な改善を持っています。

9.2.1. 楽観的重複アドレス検出(Optimistic Duplicate Address Detection)

DAD (Duplicate Address Detection) は IPv6 の Neighbor Discovery Protocol 部分の機能です。精確には DAD は IPv6 アドレスが既に使用中かどうかのチェックの役目を持っています。Red Hat Enterprise Linux は、楽観的 DAD(DAD の速度最適化)を収納しています。

9.2.2. Intra-Site Automatic Tunnel Addressing Protocol

Red Hat Enterprise Linux 6 では Intra-Site Automatic Tunnel Addressing Protocol (ISATAP) 用のサポートが特徴の1つです。ISATAP は IPv6 ルータとホストを IPv4 ネットワークインフラストラクチャ上に接続するためのメカニズムを提供することにより、IPv4 から IPv6 への移動を 支援するように設計されています。

9.3. Netlabel

Netlabel は Red Hat Enterprise Linux 6 内のカーネルレベルの新しい機能であり、Linux Security Modules (LSM) のためのネットワークパケット ラベル付けサービスを提供します。netlabel を使用してデータパケットにラベルを付けると、LSM が来信するネットワークパケットに対してセキュリティ要求の強制を向上します。

9.4. Generic Receive Offload

Red Hat Enterprise Linux 6 の低レベルネットワーク実装は、Generic Receive Offload (GRO) のサポートをその特徴の1つとして収納しています。 GRO システムは、CPU で実行されるプロセッシングの量を低減することにより来信ネットワーク接続のパフォーマンスを向上します。GRO は Large Receive Offload (LRO) システムと同じ技術を実装しますが、より広範囲のトランスポートレイヤープロトコルに適用できます。

9.5. ワイヤレスのサポート

Red Hat Enterprise Linux 6 には、ワイヤレスネットワーキングとそのデバイス用に拡張サポートが含まれています。IEEE 802.11 基準のセットを 使用したワイヤレスローカルエリアネットワーキングのサポートは、802.11n ベースのワイヤレスネットワーキングの追加サポートを付加して 改善がなされています。

10. デスクトップ

10.1. グラフィカルスタートアップ

Red Hat Enterprise Linux 6 には、ハードウェアの初期化後にすぐに開始される新しいシームレスなグラフィカルブートシーケンスが実装されました。
Graphical Boot Screen
図8 グラフィカルブート画面

新しいグラフィカルブートシーケンスは、システムブートの進捗に関する単純で視覚的なフィードバックを提供し、ログイン画面にシームレスに切り替わります。Red Hat Enterprise Linux 6 のグラフィカルブートシーケンスはカーネルモード設定機能により有効になり、ATI、Intel、および NVIDIA のグラフィカルハードウェアで利用できます。

注記

システム管理者は、グラフィカルブート中の任意の時点で F11 キーを押すことによりブートシーケンスの進捗の詳細を参照できます。

10.2. サスペンドとレジューム

サスペンドとレジュームは、マシンを省電力状態に切り替えたり、省電力状態から復帰したりできる Red Hat Enterprise Linux の最新の機能です。新しいカーネルモード設定機能により、サスペンドおよびレジューム機能のサポートが強化されました。以前は、グラフィックスハードウェアはユーザースペースアプリケーションを使用してサスペンドおよびレジュームの操作が行われていました。Red Hat Enterprise Linux 6 では、この機能はカーネルに移動し、省電力モードを有効にする安定したメカニズムが提供されます。

10.3. 複数ディスプレイサポート

Red Hat Enterprise Linux 6 では、複数のディスプレイを使用するワークステーションのサポートが強化されました。マシンにディスプレイが追加された場合、グラフィックスドライバはディスプレイを検出し、自動的にデスクトップに追加します。また、ディスプレイが取り外された場合、グラフィックスドライバはデスクトップからディスプレイを自動的に削除します。

注記

デフォルトでは、ディスプレイは、現在のディスプレイの左側にスパンレイアウトで追加されます。
追加ディスプレイの自動検出は、ディスプレイを頻繁に追加したり、取り外したりする場合 (ラップトップに外部プロジェクターをセットアップする場合など) に役に立ちます。

10.3.1. ディスプレイ設定

新しいディスプレイ設定ダイアログで、複数のディスプレイレイアウトをカスタマイズできるようになりました。
Display Preferences dialog
図9 ディスプレイ設定ダイアログ

この新しいダイアログでは、マシンに現在接続されている各ディスプレイの位置、解像度、リフレッシュレート、および回転の設定をすぐに変更できます。

10.4. NVIDIA 製グラフィックスデバイス用の nouveau ドライバ

Red Hat Enterprise Linux 6 には、NVIDIA GeForce 200 シリーズ以前の NVIDIA 製グラフィックスデバイス用の新しい nouveau ドライバがデフォルトで導入されました。nouveau は 2D、ソフトウェアビデオアクセラレーション、およびカーネルモード設定をサポートします。

注記

NVIDIA 製ハードウェア (nv) 用の以前のデフォルトのドライバは、引き続き Red Hat Enterprise Linux 6 で利用できます。

10.5. 国際化

10.5.1. IBus

Red Hat Enterprise Linux 6 には、アジア系言語のデフォルトインプットメソッドフレームワークとして Intelligent Input Bus (IBus) が導入されました。

10.5.2. インプットメソッドの選択と設定

Red Hat Enterprise Linux 6 には、インプットメソッドを有効にしたり、設定したりできるグラフィカルユーザーインタフェースである im-chooser が含まれます。im-chooser (メインメニューで [System] > [Preferences] > [Input Method] と選択) を使用すると、ユーザーはシステムで利用できるインプットメソッドを簡単に有効にしたり、設定したりできます。

10.5.3. Indic Onscreen Keyboard

新しい Indic Onscreen Keyboard (iok) はインド系言語のスクリーンベースの仮想キーボードであり、インスクリプトキーマップレイアウトや他の 1:1 キーマッピングを使用したインプットを可能にします。

10.5.4. インド系言語での並べ替えのサポート

Red Hat Enterprise Linux 6 ではインド系言語の並べ替えが改善されました。メニューや他のインタフェース要素の順序が、インド系言語で正しく並べ替えられるようになりました。

10.5.5. フォント

Red Hat Enterprise Linux 6 でのフォントサポートが改善され、中国語、日本語、韓国語、インド系言語、およびタイ語のフォントが更新されました。

10.6. アプリケーション

Red Hat Enterprise Linux 6 デスクトップのほとんどのアプリケーションが更新されました。次のセクションでは、最も重要な更新について説明しています。

10.6.1. Firefox

Red Hat Enterprise Linux 6 には、バージョン 3.5 の Mozilla Firefox Web ブラウザが含まれます。
Firefox の新しい機能の詳細については、Firefox リリースノートを参照してください。

10.6.2. Thunderbird 3

Red Hat Enterprise Linux 6 には、タブメッセージ、スマートフォルダ、およびメッセージアーカイブを提供するバージョン 3 の Mozilla Thunderbird 電子メールクライアントが含まれます。Thunderbird 3 の新しい機能の詳細については、Thunderbird リリースノートを参照してください。

10.6.3. OpenOffice.org 3.1

Red Hat Enterprise Linux 6 には、Microsoft Office OOXML フォーマットを含むさまざまなファイルフォーマットを読むサポートが追加された OpenOffice.org 3.1 が含まれます。また、OpenOffice.org では、ファイルロックのサポートが強化され、アンチエイリアスを使用してグラフィックをレンダリングできるようになりました。
OpenOffice.org 3.1
図10 OpenOffice.org 3.1

このバージョンの OpenOffice.org におけるすべての機能の詳細については、OpenOffice.org リリースノートを参照してください。

10.7. NetworkManager

NetworkManager はさまざまなネットワーク接続タイプを設定、構成、および管理するために使用するデスクトップツールです。
NetworkManager
図11 NetworkManager

Red Hat Enterprise Linux 6 では、NetworkManager のモバイルブロードバンドデバイスと IPv6 のサポートが強化され、Bluetooth Personal Area Network (PAN) デバイスへの接続のサポートが追加されました。

10.8. KDE 4.3

Red Hat Enterprise Linux 6 では、別のデスクトップ環境として KDE 4.3 が提供されます。
KDE 4.3 は、以下のような完全に新しいユーザーエクスペリエンスを提供します。
  • 新しいプラズマデスクトップワークスペース (カスタマイズ可能なデスクトップを実現するプラズマウィジェットを含む)
  • アイコンおよびサウンドテーマが拡張された Oxygen
  • KDE Window Manager (kwin) の拡張
また、KDE のデフォルトファイルブラウザとして、konqueror の代わりに dolphin が使用されるようになりました。

11. ドキュメンテーション

Red Hat Enterprise Linux 6 のドキュメンテーションは、18 冊のドキュメントから構成されます。これらの各ドキュメントは、次のいずれかまたは複数のカテゴリに属します。
  • リリースドキュメンテーション
  • インストールおよびデプロイメント
  • セキュリティ
  • ツールおよびパフォーマンス
  • クラスタリング
  • 仮想化

11.1. リリースドキュメンテーション

リリースノート
The リリースノートは、Red Hat Enterprise Linux 6 の主要な新しい機能について説明します。
テクニカルノート
Red Hat Enterprise Linux テクニカルノートには、テクノロジープレビュー、パッケージ変更の詳細、および既知の問題を含む、このリリースに固有の詳細情報が含まれます。
移行ガイド
Red Hat Enterprise Linux 移行ガイドは Red Hat Enterprise Linux 5 から Red Hat Enterprise Linux 6 への移行について説明します。

11.2. インストールおよびデプロイメント

インストールガイド
インストールガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 のインストールに関する重要な情報を提供します。
デプロイメントガイド
デプロイメントガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 のデプロイメント、設定、および管理に関する重要な情報を提供します。
ストレージ管理ガイド
ストレージ管理ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 で効果的にストレージデバイスとファイルシステムを管理する方法について説明します。このガイドは、Red Hat Enterprise Linux または Linux の Fedora ディストリビューションに関してある程度経験があるシステム管理者を対象としています。
Global File System 2
The Global File System 2 ドキュメントは、Red Hat Enterprise Linux 6 での Red Hat GFS2 (Red Hat Global File System 2) の設定および管理に関する情報を提供します。
論理ボリュームマネージャ管理
The 論理ボリュームマネージャ管理ドキュメントは、LVM 論理ボリュームマネージャについて説明します (クラスタ環境での LVM の実行に関する情報を含む)。

11.3. セキュリティ

セキュリティガイド
セキュリティガイドは、ローカルおよびリモートの侵入、攻撃、および悪意のあるアクティビティに対してワークステーションとサーバーをセキュアにするプロセスと方法をユーザーおよび管理者が学習できるよう設計されています。
SELinux ユーザーガイド
SELinux ユーザーガイドは、フレームワークについての経験が少ない方、またはまったくない方を対象としてセキュリティ Security-Enhanced Linux の管理と使用について説明します。これは、SELinux を紹介し、使用する用語やコンセプトについて説明します。
制限されたサービスの管理
制限されたサービスの管理 (Managing Confined Services) ガイドは、Security-Enhanced Linux (SELinux) を使用および設定する上級ユーザーおよび管理向けに設計されています。このガイドは Red Hat Enterprise Linux を対象とし、ユーザーや管理者が設定しなければならない可能性があるサービスに関係する SELinux のコンポーネントについて説明します。また、これには、これらのサービスを設定する実際の例と、SELinux が操作をどのように補完するかのデモが含まれます。

11.4. ツールおよびパフォーマンス

リソース管理ガイド
リソース管理ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 でシステムリソースを管理するためのツールとテクニックについて説明します。
電力管理ガイド
電力管理ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 システムの電力消費を効果的に管理する方法について説明します。このドキュメントは、電力消費を削減するさまざまなテクニック (サーバー向けとラップトップ向けの両方) と、各テクニックがシステムの全体のパフォーマンスにどのように影響を与えるかについて説明します。
開発者ガイド
開発者ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 をアプリケーション開発に最適なエンタープライズプラットフォームにするさまざまな機能とユーティリティについて説明します。
SystemTap 初心者ガイド
SystemTap 初心者ガイドは、SystemTap を使用して Red Hat Enterprise Linux のさまざまなサブシステムを監視するための基本的な手順を詳細に説明します。
SystemTap タップセットリファレンス
The SystemTap タップセットリファレンスガイドは、ユーザーが SystemTap スクリプトに適用できる最も一般的なタップセット定義について説明します。

11.5. 高可用性

クラスタスイートの概要
クラスタスイートの概要は、Red Hat Enterprise Linux 6 の高可用性について概説します。
高可用性管理
高可用性管理ドキュメントはは、Red Hat Enterprise Linux 6 の Red Hat High Availability システムの設定および管理について説明します。
仮想サーバー管理
仮想サーバー管理ドキュメントは、Red Hat Enterprise Linux 6 と Linux Virtual Server (LVS) システムを使用した高パフォーマンスのシステムおよびサービスの設定について説明します。
DM マルチパス
DM マルチパスドキュメントは、Red Hat Enterprise Linux 6 の Device-Mapper Multipath 機能の使用に関する情報を提供します。

11.6. 仮想化

仮想化ガイド
仮想化ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 で仮想化テクノロジーをインストール、設定、および管理するプロセスについて詳しく説明します。

12. カーネル

12.1. リソース制御

12.1.1. 制御グループ

制御グループは、Red Hat Enterprise Linux 6 の Linux カーネルの新しい機能です。各制御グループはシステムハードウェアとのやりとりを管理しやすくするためにグループにまとめられたシステム上のタスクセットです。制御グループは、使用するシステムリソースを監視するよう追跡できます。また、システム管理者は制御グループインフラストラクチャを使用してメモリ CPU (または CPU のグループ)、ネットワーキング、I/O、スケジューラなどのシステムリソースへの特定の制御グループアクセスを許可または拒否できます。ユーザースペースでの制御グループの管理は、libcgroup によって提供され、システム管理者は新しい制御グループを作成したり、特定の制御グループで新しいプロセスを開始したり、制御グループパラメータを設定したりできます。

注記

制御グループと他のリソース管理機能の詳細は、Red Hat Enterprise Linux 6 の リソース管理ガイドで説明されています。

12.2. スケーラビリティ

12.2.1. Completely Fair Scheduler (CFS)

プロセス (または、タスク) スケジューラは、CPU に送信するプロセスの順序を割り当てる特定のカーネルサブシステムです。Red Hat Enterprise Linux 6 に同梱されるカーネル (バージョン 2.6.32) では、O(1) スケジューラの代わりに新しい Completely Fair Scheduler (CFS) が使用されます。CFS には、fair queuing スケジューリングアルゴリズムが実装されます。

12.2.2. 仮想メモリページアウトスケーラビリティ

仮想メモリはカーネルにより実装され、メモリアドレスの連続した単一のブロックをアプリケーションに提供します。この実際のしくみは複雑であり、一般的に実際の物理アドレスは断片化され、固定ディスクなどの非常に低速なデバイスにページアウトされていることもあります。仮想メモリアドレスはカーネルによってページと呼ばれる標準的な単位で管理されます。Red Hat Enterprise Linux 6 のカーネルでは、仮想メモリページの管理が強化され、大量の物理メモリが搭載されたシステムで必要な処理の負荷が削減されます。

12.3. エラーレポート

12.3.1. Advanced Error Reporting (AER)

Red Hat Enterprise Linux 6 のカーネルには、Advanced Error Reporting (AER) が実装されています。AER は、PCI-Express デバイス向けに拡張エラーレポートを提供する新しいカーネル機能です。

12.3.2. Kdump 自動有効化

Kdump が大量のメモリが搭載されたシステムでデフォルトで有効になるようになりました。kdump がデフォルトで有効なるシステムは次のとおりです。
  • 4KB ページサイズのアーキテクチャ (x86 や x86_64 など) で 4GB を超えるメモリが搭載されたシステム
  • ページサイズが 4KB よりも大きいアーキテクチャ (PPC64 など) で 8GB を超えるメモリが搭載されたシステム

12.4. 電力管理

12.4.1. Aggressive Link Power Management (ALPM)

Red Hat Enterprise Linux 6 のカーネルは、Aggressive Link Power Management (ALPM) をサポートします。ALPM はアイドル中 (I/O が存在しないとき) にディスクへの SATA リンクを低電力設定に設定することによりディスクが電力を節約できるようにする電力節約テクニックです。I/O 要求が SATA リンクのキューに格納されると、ALPM は自動的に SATA リンクをアクティブな電力状態に再び設定します。

12.4.2. ティックレスカーネル

以前はカーネルに、未処理のタスクが存在するかどうかを確認するために定期的にシステムに問い合わせるタイマーが実装されていました。このため、CPU はアクティブな状態のままになり、不必要な電力が消費されていました。Red Hat Enterprise Linux 6 のカーネルでは、新しいティックレスカーネル機能が導入され、定期的なタイマー割り込みの代わりにオンデマンドの割り込みが使用されます。ティックレスカーネルでは、CPU はアイドル中に長いスリープ状態に切り替わり、タスクが処理のためにキューに格納された場合にみウェイクします。

12.5. カーネルパフォーマンスの分析

12.5.1. Performance Counter for Linux (PCL)

Linux Performance Counter インフラストラクチャは、実行された命令数、キャッシュミスヒット数、予測に失敗したブランチ数などの、抽象的なパフォーマンスカウンタハードウェア機能を提供します。PCL はタスクごとのカウンタおよび CPU ごとのカウンタを提供し、これらのカウンタ以外のイベント機能を追加します。パフォーマンスカウンタ情報は、カーネル機能およびイベントのプロファイリングに使用でき、カーネルパフォーマンス問題の分析に役立ちます。

12.5.2. Ftrace および perf

Red Hat Enterprise Linux 6 では、カーネルパフォーマンスの分析に役に立つ 2 つの新しいツールを利用できます。Ftrace はカーネルに対してコールグラフスタイルトレーシングを提供します。新しい perf ツールはシステムハードウェアイベントを監視し、ログに記録し、分析します。

12.6. 一般的なカーネル更新

12.6.1. Physical Address Extension (PAE)

Physical Address Extension (PAE) は、x86 プロセッサに実装された機能です。PAE はメモリアドレッシング機能を拡張し、4 ギガバイト (GB) を超える Random Access Memory (RAM) を使用できるようにします。x86 アーキテクチャバージョンの Red Hat Enterprise Linux 6 に同梱されるデフォルトのカーネルは PAE 対応です。x86 系の Red Hat Enterprise Linux 6 では、PAE 対応プロセッサが最小要件となります。

12.6.2. ロード可能なファームウェアファイル

適切なライセンスがないソースコード用のファームウェアファイルが Red Hat Enterprise Linux 6 カーネルから削除されました。ロード可能なファームウェアが必要なモジュールは、カーネルインタフェースを使用してユーザースペースからファームウェアを要求するようになりました。

13. コンパイラとツール

13.1. SystemTap

SystemTap は、ユーザーがオペレーティングシステム (特にカーネル) のアクティビティを詳細に学習および監視できるトレーシングおよびプロービングツールです。netstat、ps、top、iostat などのツールの出力に類似した情報を提供します。ただし、SystemTap は、収集された情報に対してより多くのフィルタリングおよび分析オプションを提供するよう設計されています。
Red Hat Enterprise Linux 6 には、以下のものを含む数多くの新機能と拡張機能を提供する SystemTap バージョン 1.1 が含まれます。
  • ユーザースペースプロービングのサポートの強化
  • ネイティブ C++ 構文を使用した C++ プログラムのプロービングのサポート
  • よりセキュアなスクリプトコンパイルサーバー
  • root 以外のユーザーが SystemTap を使用できるようにする新しい非権限モード

重要項目

非権限モードは新しく実験段階の機能です。使用される stap-server 機能はセキュリティの強化に向けて改善中であるため、信頼できるネットワークで注意してデプロイする必要があります。

13.2. OProfile

OProfile は Linux システム用のシステム全体のプロファイラです。プロファイリングはバックグラウンドで透過的に実行され、プロファイルデータはいつでも収集できます。
Red Hat Enterprise Linux 6 にはバージョン 0.9.5 の OProfile が含まれ、新しい Intel プロセッサと AMD プロセッサのサポートが追加されます。

13.3. GNU Compiler Collection (GCC)

GNU Compiler Collection (GCC) には、C、C++、および Java の GNU コンパイラや関連するサポートライブラリなどが含まれます。Red Hat Enterprise Linux 6 には、次の機能と拡張を含むバージョン 4.4 の GCC が含まれます。
  • バージョン 3.0 の Open Multi-Processing (OpenMP) Application Programming Interface (API) への準拠
  • OpenMP スレッドを使用する追加の C++ ライブラリ
  • 次世代の ISO C++ 標準ドラフト (C++0x) の実装
  • GNU Project Debugger (GDB) と SystemTap を使用してデバッグを改善するための可変トラッキング割り当ての導入
GCC 4.4 で導入された改善の詳細は、GCC Web サイトで入手できます。

13.4. GNU C Library (glibc)

GNU C Library (glibc) パッケージには、Red Hat Enterprise Linux 上の複数のプログラムによって使用される標準手な C ライブラリが含まれます。これらのパッケージには標準的な C ライブラリと標準的な数学ライブラリが含まれます。これら 2 つのライブラリがないと、Linux システムは正しく動作しません。
Red Hat Enterprise Linux 6 には、次のものを含む数多くの機能と拡張を提供するバージョン 2.11 の glibc が含まれます。
  • 多くのソケットとコア全体でスケーラビリティを向上する拡張されたダイナミックメモリアロケーション (malloc) 動作。これは、スレッドに独自のメモリプールを割り当て、一部の状況でのロックを回避することによって実現できます。メモリプール (存在する場合) に使用する追加メモリの量は、環境変数 MALLOC_ARENA_TEST および MALLOC_ARENA_MAX を使用して制御できます。MALLOC_ARENA_TEST は、コアの数のテストがメモリプールの数がこの値に到達したら実行されるよう指定します。MALLOC_ARENA_MAX はコアの数に関係なく、使用されるメモリプールの最大数を設定します。
  • PI ファストユーザースペース mutex のカーネルのサポートを使用して条件変数 (condvars) を PI (Priority Inheritance) mutex (mutual exclusion) 操作で使用する場合の効率性の向上
  • x86_64 アーキテクチャでの最適化された文字列操作
  • getaddrinfo() 関数が Datagram Congestion Control Protocol (DCCP) と UDP-Lite プロトコルをサポートするようになりました。また、getaddrinfo() が IPv4 アドレスと IPv6 アドレスを同時にルックアップできるようになりました。

13.5. GNU Project デバッガ (GDB)

GNU Project デバッガ (一般的に GDB と呼ばれます) は、C、C++、およびその他の言語で記述されたプログラムを制御された方法で実行し、データを出力することによりこれらのプログラムをデバッグします。Red Hat Enterprise Linux 6 にはバージョン 7.0 の GDB が含まれます。
Python スクリプト
この更新された GDB のバージョンには新しい Python API が実装され、Python プログラミング言語で記述されたスクリプトを使用して GDB を自動化できます。
Python API の注目すべき機能の 1 つは Python スクリプトを使用して GDB 出力 (通常は pretty-printing と呼ばれます) をフォーマットできることです。以前は、GDB の pretty-printing は標準的な印刷設定を使用して設定されていました。カスタムの pretty-printer スクリプトを作成できることにより、ユーザーは特定のアプリケーションの情報を GDB がどのように表示するかを制御できます。Red Hat Enterprise Linux には、GNU Standard C++ Library (libstdc++) 用の pretty-printer スクリプトの完全なスイートが同梱されます。
C++ 拡張サポート
GDB での C++ プログラミング言語のサポートが強化されました。注目すべき改善は以下のとおりです。
  • 式の解析に関する数多くの改善
  • タイプ名の処理の改善
  • 余分なクォーティングの必要がほぼなくりました。
  • 劣っている方が例外スローした場合であっても "next" およびその他のステッピングコマンドが正常に動作します。
  • GDB に新しい "catch syscall" コマンドが含まれました。これを使用すると、劣った方がシステムコールを呼び出したときに常に劣った方を停止できます。
独立したスレッドデバッグ
スレッド実行で、スレッドを個々にお互い独立してデバッグできるようになりました。これは新しい設定 "set target-async" と "set non-stop" によって有効になります。

14. 相互運用性

14.1. Samba

Samba はファイル、プリンタ及び他の情報(利用可能なファイルのディレクトリやプリンタなど)の共有を有効にする為に TCP/IP (NetBT) 上で NetBIOS を使用するプログラムのスイートです。このパッケージは SMB(Server Message Block)サーバー(別名、CIFS 「Common Internet File System」サーバー)を提供します。SMB サーバーが SMB/CIFS のクライアントにネットワークサービスを提供できます。
Red Hat Enterprise Linux 6 は以下のような重要な拡張機能を Samba に提供します:
  • IPv6 (Internet Protocol version 6) のサポート
  • Windows 2008 (R2) 信頼関係へのサポート
  • Windows 7 ドメインメンバーへのサポート
  • Active Directory LDAP 署名/締結 ポリシーへのサポート
  • libsmbclient への改善
  • Windows 管理ツールへのより良いサポート(mmc 及びユーザーマネージャ)
  • ドメインメンバーとしての自動マシンパスワード変更
  • 新規レジストリベースの設定レイヤー
  • Samba のクライアントとサーバー間の暗号化 SMB 転送
  • Windows cross-forest、transitive trusts(遷移的信頼)、one-way domain trusts(単一方向ドメイン信頼)への完全サポート
  • 新規の NetApi リモート管理及び winbind クライアント C ライブラリ
  • Windows Domain を結合するための新規のグラフィカルユーザーインターフェイス

詳細文献

Red Hat Enterprise Linux 6 に於ける Samba 設定に関する詳細情報には 導入ガイド Deployment Guide を参照して下さい。

15. 仮想化

15.1. カーネルベースの仮想マシン

Red Hat Enterprise Linux 6 には、AMD64 アーキテクチャおよび Intel 64 アーキテクチャ向けの Kernel-based Virtual Machine (KVM) ハイパーバイザの完全サポートが含まれます。KVM は Linux カーネルに統合され、Red Hat Enterprise Linux で提供される安定性、機能、およびハードウェアサポートを活用する仮想化プラットフォームを提供します。

15.1.1. メモリ拡張

  • Transparent Hugepages により、メモリページサイズが 4 キロバイトいから 2 メガバイトに増加しました。Transparent Hugepages を使用すると、リソースの要求が高く、大量のメモリを必要とする負荷があるシステムでパフォーマンスが大幅に向上します。また、Red Hat Enterprise Linux 6 は、KSM での Transparent Hugepages の使用もサポートします。
  • Extended Page Table の期間ビットにより、ホストはメモリが足りない状況でメモリスワップをスマートに選択でき、拡張ページを小さいページに分割することによって Transparent Hugepages のスワッピングが可能になります。

15.1.2. 仮想化 CPU の機能

  • Red Hat Enterprise Linux 6 は、単一の仮想化ゲストに対して最大 64 個の仮想化 CPU をサポートします。
  • ホストプロセッサに存在する CPU 拡張を仮想化ゲストで使用できるようになりました。これらの命令セットのサポートにより、仮想化ゲストは最新のプロセッサ命令セットとハードウェア機能を使用できるようになりました。
  • 新しい x2apic の仮想 Advanced Programmable Interrupt Controller (APIC) により、直接的なゲスト APIC アクセスが許可され、エミュレートされたアクセスのオーバーヘッドが取り除かれるため、仮想化 x86_64 のゲストのパフォーマンスが向上しました。
  • 新しいユーザースペース通知機能により CPU レジスタのキャッシングが可能になり、コンテキストの切替時に未使用のコンポーネントのレジスタステータスを保持する、処理コストが大きいアクションが回避されるようになりました。
  • Read Copy Update (RCU) カーネルロックが、拡張された対称マルチプロセシングサポートを使用するようになりました。RCU カーネルロックにより、ネットワーキング機能とマルチプロセシングシステムのパフォーマンスが向上しました。

15.1.3. ストレージ

  • QEMU エミュレーションブロックドライバが、完全に非同期の I/O、preadv、および pwritev の機能をサポートするようになりました。これらの機能により、QEMU エミュレーションブロックドライバを使用するストレージデバイスのパフォーマンスが向上しました。
  • QEMU Monitor Protocol (QMP) により、アプリケーションが QEMU Monitor と適切に通信できるようになりました。QEMU は簡単に解析できるテキストベースのフォーマットを提供し、非同期メッセージと機能ネゴシエーションをサポートします。
  • 疑似仮想化 (virtio) ドライバの間接的なリングエントリ (スピンロック) により、ブロック I/O パフォーマンスが向上し、より多くの同時 I/O 操作を行えるようになりました。
  • 仮想化ストレージデバイスを実行時にゲストから追加および削除 (ホットプラグ) できるようになりました。
  • ブロックアライメントストレージトポロジ認識機能のサポート。基礎となるストレージハードウェア機能と物理ストレージセクタサイズ (たとえば、4KB のセクタ) がゲストに提供されます。この機能を使用するには、互換性のあるストレージデバイスの情報とコマンドが必要です。ゲストトポロジ認識機能により、仮想化ゲストはファイルシステムレイアウトを最適化でき、I/O 最適化を使用するアプリケーションのパフォーマンスが向上します。
  • qcow2 仮想化イメージフォーマットのパフォーマンスの向上。

15.1.4. ネットワーキング

  • vhost-net 機能により、さまざまなネットワーク機能が QEMU ユーザースペースからカーネルに移動しました。vhost-net はより少ないコンテキスト切り替えと vmexit コールを使用します。これらの拡張により、SR-IOV デバイス、直接割り当てられたネットワークデバイス、および他のネットワークデバイスのパフォーマンスが向上しました。
  • ネットワークデバイスで利用可能な割り込みの数を増やす MSI-X サポート。MSI-X サポートにより、互換性のあるハードウェアのパフォーマンスが向上します。
  • 実行しているゲストから仮想化ネットワークデバイスをホットプラグおよびホットリムーブできるようになりました。より高度な PXE ネットワークブートを実現するためにネットワークブートは gpxe を使用します。

15.1.5. Kernel SamePage Merging

Red Hat Enterprise Linux 6 の KVM ハイパーバイザに Kernel SamePage Merging (KSM) が実装され、KVM ゲストが同一のメモリページを共有できるようになりました。ページ共有により、メモリの重複が少なくなり、特定のホストでより多くの類似ゲストオペレーティングシステムを実行することができるようになりました。

15.1.6. PCI パススルー

実行しているゲストから PCI パススルー (直接割り当て) デバイスをホットプラグおよびホットリムーブできるようになりました。

15.1.7. SR-IOV

SR-IOV がローソケットモードをサポートするようになりました。以前はネットワーキング割り込みはソフトウェアブリッジングによりタップモードで処理されていました。SR-IOV は、ゲストへの論理ネットワークインタフェースの割り当てをサポートします。
以前は SR-IOV は移行をサポートしていませんでした。vhost-net 抽象化により、SR-IOV に透過的な割り当てが提供され、同一でないシステムでの移行が可能になりました。

15.1.8. virtio-serial

疑似仮想化シリアルデバイス (virtio-serial) により、ホストのユーザースペースとゲストのユーザースペース間の単純な通信インタフェースが提供されます。virtio-serial は、ネットワーキングが利用できない場合に通信を行うために使用できます。

15.1.9. sVirt

sVirt は、SELinux と仮想化を統合する Red Hat Enterprise Linux 6.0 の新しい機能です。仮想化ゲストを使用する場合にセキュリティを強化するために sVirt は Mandatory Access Control (MAC) を適用します。sVirt によりセキュリティが向上し、ホストまたは他の仮想化ゲストに対する攻撃ベクトルとして使用される可能性があるハイパーバイザのバグからシステムを守ることができます。

15.1.10. 移行

  • ゲスト ABI の安定性により移行サポートが強化されました。ゲスト PCI デバイス番号が移行中に維持され、ゲストの移行後に同一の PCI デバイス位置が提供されるようになりました。
  • 移行で CPU モデルが考慮されるようになりました。CPU モデルにより、ゲストは新しいプロセッサ命令セットを利用できるようになります。ゲストは互換性のある CPU モデルを持つホストに移行できます。
  • vhost-net 機能により、SR-IOV を使用するゲストを、同様に SR-IOV デバイスを使用する同一でないホスト設定に移行できます。
  • 移行プロトコルの拡張。

15.1.11. ゲストデバイス ABI の安定性

新しい qdev デバイスモデルの一部としてゲスト ABI が安定し、新しいリリースでも整合性が維持されるようになりました。ゲストのデバイスとデバイス割り当ては将来のアップデートでも維持されます。この機能により、一部のオペレーティングシステムのアクティベーションプロセスに関する問題が解決されました。

注記

Red Hat Enterprise Linux 6 には、Simple Protocol for Independent Computing Environments (SPICE) リモートディスプレイプロトコルに機能を提供するコンポーネントが含まれます。これらのコンポーネントは Red Hat Enterprise Virtualization 製品での使用に対してのみサポートされ、ABI が安定することは保証されません。このコンポーネントは、Red Hat Enterprise Virtualization 製品の機能要件を満たすよう更新されます。将来のリリースへの移行では、システムごとに手動で操作しなければならないことがあります。

15.2. Xen

Red Hat Enterprise Linux 6 は、x86、AMD 64、および Intel 64 アーキテクチャ向けに Xen ゲストとしてサポートされます。疑似仮想化操作 (pv-ops) は Red Hat Enterprise Linux 6 カーネルに含まれます。デフォルトの Red Hat Enterprise Linux 6 カーネルは、Red Hat Enterprise Linux 5 ホストで Xen 疑似仮想化ゲストおよび Xen 完全仮想化ゲストとして使用できます。Red Hat Enterprise Linux 6 には、完全仮想化 Xen ゲストインストール用の疑似仮想化ドライバが含まれます。
Red Hat Enterprise Linux 6 は Xen ホストとしてサポートされません。

その他の資料

仮想化ガイドは、Red Hat Enterprise Linux 6 で仮想化テクノロジをインストール、設定、および管理するプロセスについて詳しく説明します。

15.3. virt-v2v

Red Hat Enterprise Linux 6 には新しい virt-v2v ツールが導入され、システム管理者は Xen や VMware ESX などの他のシステムで作成された仮想マシンを変換およびインポートできます。virt-v2v は Red Hat Enterprise Linux 5 ハイパーバイザで実行されている Xen ゲストの移行パスを提供します。

16. サポート容易性及びメンテナンス

16.1. firstaidkit(救急)システムと復元ツール

Red Hat Enterprise Linux 6 には、新しい firstaidkit システム復元ツールが含まれています。一般的な復元プロセスを 自動化することにより、firstaidkit は正常に起動しないシステムのトラブルシューティングと復元で支援するための対話式環境を提供します。更には、システム管理者は firstaidkit プラグインインフラストラクチャを使用してカスタム化した自動復元プロセスを構成することができます。

重要項目

firstaidkit は Red Hat Enterprise Linux 6 では技術プレビューと見なされています。

16.2. バグの報告

16.2.1. インストールクラッシュレポーティング

Red Hat Enterprise Linux 6 では、インストーラ内に拡張型インストールクラッシュレポーティングを収納しています。 「インストールクラッシュレポート」 を参照して下さい。

16.3. 自動化したバグ報告ツール

Red Hat Enterprise Linux 6 の特徴として新しい ABRT (Automated Bug Reporting Tool) があります。ABRT はローカルシステム上のソフトウェア クラッシュの詳細をログして、 Red Hat Bugzilla バグ追跡ウェブサイト 内に即時にチケットを開くためのインターフェイス(グラフィカルとコマンドラインの両方)を提供します。
Automated Bug Reporting Tool
図12 自動化したバグ報告ツール

17. Web サーバーとサービス

17.1. Apache HTTP Web サーバー

Apache HTTP サーバーは堅牢で、商用グレードのオープンソース Web サーバーです。Red Hat Enterprise Linux 6 には、Apache HTTP サーバー 2.2.15 と共にその機能を強化するために設計されたサーバーモジュールが数多く含まれています。
Red Hat Enterprise Linux 6 内の Apache は SNI (Server Name Indication) プロトコルへのサポートを特徴としており、これが SSL (Secure Sockets Layer) 接続上の名前ベースの仮想ホスティングを可能にします。更には、WSGI (Web Server Gateway Interface) がこのリリース用に Apache に追加されて、WSGI 基準を実装する python web アプリケーションフレームワークの使用を可能にしています。

17.2. PHP: Hypertext Preprocessor (PHP)

PHP は、通常 Apache HTTP Web サーバーと共に使用される HTML 埋め込み型のスクリプティング言語です。Red Hat Enterprise Linux では、 PHP は今回、APC (Alternative PHP Cache) をサポートします。

17.3. memcached

memcached はハイパフォーマンスの分散型オブジェクトキャッシングサーバーで、これはデータベース負荷を低減することにより動的なウェブアプリケーションのパフォーマンスを向上するように設計されています。memcached はこのリリースの新しい機能であり C、PHP、Perl 及び Python などのプログラミング言語用の結合を提供します。

18. データベース

18.1. PostgreSQL

PostgreSQL は高度なオブジェクト関係データベース管理システム (DBMS) です。PostgreSQL パッケージには、PostgreSQL DBMS サーバーに アクセスするために必要となるクライアントプログラムとライブラリが含まれています。
Red Hat Enterprise Linux 6 は PostgreSQL のバージョン 8.4 を収納しています。

18.2. MySQL

MySQL はマルチユーザーでマルチスレッドの SQL データベースサーバーです。これは MySQL サーバーデーモン(mysqld) 及び多くのクライアント プログラムとライブラリで構成されています。
このリリースには MySQL のバージョン 5.1 が収納されています。このバージョンが提供する拡張項目の全ての一覧については、MySQL Release Notes を参照して下さい

19. アーキテクチャ関連の事項

Red Hat Enterprise Linux 6 はアーキテクチャ的に完成しており、サポートされるアーキテクチャが今回全て利用できます。
Red Hat Enterprise Linux 6 は Intel® Itanium® アーキテクチャへのサポートは提供していません。全ての Itanium 関連の開発は 専属的に Red Hat Enterprise Linux 5 に統合されています。公表されている Red Hat Enterprise Linux のプロダクトライフサイクルに従って Red Hat Enterprise Linux 5 は 2014 年3 月から新しい機能のサポート及び配布をし、新規の Itanium ハードウェアを有効にします。 更には、Red Hat Enterprise Linux 5 の Itanium 用拡張サポートが、2017 年 3 月まで選抜された OEM から利用できるようになります。
POWER アーキテクチャでは、Red Hat Enterprise Linux 6 は POWER6 あるいはそれ以上の CPU を必要とします。POWER5 プロセッサは Red Hat Enterprise Linux 6 ではサポートされていません。

A. 改訂履歴

改訂履歴
改訂 1Wed Aug 12 2010Lerch Ryan [FAMILY Given]
Red Hat Enterprise Linux 6 リリースノートの初期バージョン